相変わらず高齢者の事故による報道が後を絶たないが、事故が起こってから責任の所在などについて騒ぐのではなく、如何にして事故を未然に防ぐのか?ということについてもっと議論されてしかるべきだろうと思う。
また、技術立国、几帳面な国民性も相まって、どうしても技術的に乗り越えようとする論調にもなりがちで、自動ブレーキや自動運転などのメカに頼る流れも最近は多く見かけるが、少なくとも、古い車に後から付けるという事も難しい上に費用も掛かり、そもそも、高齢者にとって年金が下がり保険が上がる中での厳しいフトコロ事情を考えると、費用負担の少ない方法で乗り切る事を検討する必要が有るのでは無いだろうか?
みんながみんな、衝突予防機能付きの新車を買える訳では無いのだから。
そもそも、人間は間違いを起こすものだし、自動車事故を完全に防ぐことは出来ないという前提で、社会全体として「元を絶つ」事に意識を集中するべきだと筆者は考えている。
ペダル踏み間違い事故は無くならない?
以前にも話題にしているが、特にアクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる暴走事故については、車を作る側の工夫で防げる部分も大きい筈だと考えている。
ただ単に「気をつけよう」だけではどうしようも無い、という事は過去の例がイヤと言うほど示している。
もはや自助努力でなんとかなる問題では無いし、高齢者に限った話でも無い。
一方的に高齢者だけを悪者にして免許の返納へと誘導する世論が形成されていくことには大変危惧を抱いている。
高齢者講習
現在、70歳以上の後期高齢者には特別な講習を義務づけられており、身体機能や認知症などの検査が行われる事になっている。
しかし、この検査というのは非常にあやふやな物になることが多い。
明らかに身体機能に異常が見られるとか、認知症の症状が顕著に表れるなどというケースはマレである、という事は容易に想像が出来る(そもそも、そういったケースでは検査会場へ足を運ぶことが困難)上に、認知症患者を身内に持つ人には共感を得られるかもしれないが、一口に認知症とは言っても、常に「いわゆるボケている」訳ではなくて、しっかりしている時も少なからず存在する。
身体機能や既往症などについても同様だが、たまたま、その検査時に異常が出ない等と言うことは十分起こり得る。
なので、たまたましっかりしている、問題の無い時に検査をクリアすることもあるだろう。
この講習には、一定の抑止効果は有るのかもしれないが、現状、操作ミスの事故を減らすことに対してどの程度効果が出ているのか?というのは、正直な所、事故数の増加の割には、見えてこない。
であれば、こういった施策と共に、より安全効果を見込める施策も併用してはどうだろうか?というのがここでの提案である。
そこで『MT限定免許』の提案
都会などの交通インフラが整っている所では無い場合、どうしても自動車に乗って移動しなければいけない、という切羽詰まった状況があるという事を、まず大前提に考える必要が有る。
そもそも、高齢者の方々も車の運転には少なからず不安を感じておられるにもかかわらず、「乗らないことには生活できない」という事実が目の前に横たわっている訳だ。
それに対して「危ないから運転させません」という施策一本では、心許ないのでは無いだろうか?
そこで、免許の返納という荒技以外に、国としても、もっと簡単に対策を打てるのではないか?という提案が冒頭の「高齢者用・マニュアル車限定免許」の交付である。
今でこそAT車が当たり前だが、70歳を超えるドライバーにとっては、(もう何年もMT車には乗っていないにしても)そもそも自動車の運転と言えばマニュアル車から始まっているのは間違いない。昔は存在すらしなかったのだから。
今更MT車などに乗れない、と感じる高齢者も多いだろうが、実は、たいした問題では無いものだ。