たとえば、自転車に何年も乗らなかったとしても、いざサドルにまたがってしまえば、カラダが覚えているので自然とすいすいと漕ぎ出せるもので、これと同じくMT車にしても、いざ運転を開始してみるとスグにカラダが思い出して運転できる。機会があれば、是非試して貰いたい。
MT車の運転は難しい?
確かにAT車は便利だ。渋滞の多い日本では本当に求められてしかるべき機能だと思うし、かつては、四肢の欠損など、身体に障害を持たれている方にとっては、この仕組みが無ければ自分で自動車を運転して外出するという事が大変困難だった。技術の進歩がもたらした恩恵は大変大きいとは言える。
一方で、少年による無免許運転が容易になっていると言う弊害も生まれている訳だが、これについてはまた別の機会に話したい。
一方でMT車、つまりマニュアル車の運転には、「免許」と呼ぶにふさわしい専門的な技術の取得が必要となる。
AT車の様に、
スイッチオン⇒アクセルオン、
で前に進むという、いかにも簡便な仕組みとは一線を画する。
つまり、
- 右手でステアリングホイール(ハンドル)を持ち
- 左手でシフトレバーを操作し1速に入れ
- 右足はブレーキペダルからアクセルペダルへ移動させ
- そっとアクセルペダルを踏みつつ
- じわりと左足でクラッチペダルを繋ぐ
発進一つとってみてもこれだけの手順が必要となる。
さらに速度が上がるごとにギアを上げていく必要も有るし、減速、停止の際には、再度ギアを下げる必要が有る。
つまり、ギアを入れ替える左手の操作や、つなぎ直す為のクラッチペダルを操作をする必要があり、文字通り、両手両足を使って速度や進行方向によって頻繁に切り替える必要があるという事だ。
いわゆるボケ防止の対策として「体を動かしましょう」という項目も有る訳だが、運転そのものが、こういう効果を発揮する一助となり得るだろう。
また、急発進誤発進についての予防策にもなると予想する。
ハイブリッド車や電気自動車にはMT車がほぼ存在しない訳なので、高齢者には新たに車を買い直せという事を強いることになる話だが、MT車であれば中古車で未だ入手可能なものも存在するし、衝突防止機能付きの新車を買いなさい、という風潮に比べれば、懐には優しいのでは無いだろうか?
(とはいえ、ドリ車以外のMT車もそろそろ絶滅危惧種かもしれないが)
ペダル踏み間違い事故を予防できる可能性
前進でも後進でも、車を動かすためには、アクセルペダルとクラッチペダルを同時に操作する必要が有る。
ブレーキペダルを踏みながらクラッチ操作をすると、確実にエンストする。
アクセルペダルを床まで踏んでしまって急発進したとしても、左足がクラッチペダルに乗っている状態であれば両足が緊張で踏ん張ってしまうというパニック症状が出てアクセルからブレーキへ踏み換える動作が出来ないとしても
両足が踏ん張ってしまえば、自ずとクラッチが切れ、エンジンからの動力が切断されて速度が低下する。
また、仮にクラッチが繋がってしまっている状態で誤発進してしまったなら「ブレーキを強く踏めばエンジンが止まってしまう」という利点もある。
より複雑な操作を必要とするMT車に乗ることで、誤発進の事故については、抑止効果が有ると確信しているのだが、一度、試してみてはもらえないものだろうか?