ミケルセンの実力
開幕戦のモンテカルロから、ミケルセンの早さは際立っていた。
ついつい忘れがちだが、彼は2016年まで最強だったフォルクスワーゲン(VW)のワークスドライバーであり、最終戦でヒュンダイのヌービルに抜かれたとは言え、年間ランキングも3位だった「強い」ドライバーの一人だ。
2016年最終戦オーストラリアで突如発表されたVWの撤退によりドライバー3人が同時にシートを失ったわけだが、オジェはMスポーツへ、ラトバラはトヨタへそれぞれ移籍が決まったものの、三人目のドライバーだったミケルセンは、最後の最後までシートが決まらず「浪人」する事になってしまっていた。
しかし彼は、なんと言っても2016年ランキング3位だ。
言ってしまえば、彼よりも実績が無いドライバーでもワークスシートに座っているのに、彼が出走の機会を得られないというのは、実に勿体ないと思っていた。
彼自身の経済的には、VWが今年の契約をそのまま履行しており給料は出ているらしいが、選手という生き物は競技に身を置いていないと腕や感覚がさび付いてしまうものでもあり、彼自身も第1戦で戦いたい!という情熱をみなぎらせ続けており、なんとか都合をつけては出場の機会を探っていた。
実に涙ぐましい努力と言えるだろう。
今年は、モンテ、フランス、ポルトガルにWRC2シュコダで出場し、他のWRC2ドライバーとは比べものにならない異次元の早さを見せつけてくれていて、ますますトップカテゴリーで走らせてやりたい!と思わせてくれていた。
何と言っても、二位以下を1~3分引き離してのブッチギリトップ、という状況が続いている事からも、実力が桁違いだという事は誰の目にも明らかな事実。
WRCにもスターが必要だと思う。
逆に、今、トップカテゴリーからWRC2に乗り換えたとして、ミケルセンと同じ様な、あの安定感とスピードを誰が持ち合わせているか?となると心許ない気がする。
残念ながらポルトガルでは最終SSでクラッシュしてしまったが、それまでに3分ものリードを築き上げていた事を考えると、こういったミスは仕方が無いと受け入れてしまえるから不思議だ。
WRC2と言えば、昨年チャンピオンのエサペッカ・ラッピがサードドライバーとしてトヨタワークスカーに乗るが、ミケルセンにもチャンスをあげて欲しいと個人的には思っていたので大変喜んでいる。
ミケルセンは、かつてのペター・ソルベルグを彷彿とさせる陽気なスター性を持っているので、今後のWRCには必要なキャラクターだと思っている。
やはり、モータースポーツにはお金も女子人気も引っ張ってこられる「スター」が必要だ。
スターが生まれ、ラリーが盛り上がっていくと、メーカーの力も入り、ワークス参戦も増えるかもしれない。
また、日本車の参戦が増えていくことにでもなれば、日本でのWRC開催が復活!なんて機運も生まれてくるかもしれない。
・・・といった夢を見させてくれるのは、やはりスタードライバーが居ればこそ、だと思う。