バックモニターの功罪

今や、新車でこの機能が無ければ販売は難しいのでは?と思える程、当たり前の装備になったバックモニター。
リアビューモニター等とも言うかもしれないが、最近ではリアだけでは無く前後左右を360度ぐるりと表示して、まるで上から見下ろしているかのように確認できるモニターも導入され始めている。

参考:アラウンドビューモニター(日産・車両技術研究)

大いにメリットの有る機能だが・・・

車のデザイン上の問題もあるだろうが、後方はおろか左右や斜め前後に死角が多い車などは特に、この仕組みを導入する事で本来、肉眼では見えない部分が大幅に減少する効果は大いにメリットとして挙げられるだろう。

しかし、これが有れば車庫入れも縦列駐車も余裕で楽勝!と思うのは、いささか偏った見方かもしれない。

昔、といってもほんの十数年前までは、後退そのものにもそれなりにスキルが必要だったし、バックが上手な人は運転そのものが上手、と言われるほど、スキルを必要とする操作だった。なので、不注意により、車両の後方でしゃがんで遊んでいた子供を自車の後退で轢いてしまう・・・という痛ましい事故も幾度となく発生していたが、最近では滅多に聞かなくなったことはこのバックモニターの効果と言えるだろう。

ただし、注意しなければいけないのは、この仕組みが導入されて、まだ日が浅いという事だ。

バブル世代の筆者でさえ、この仕組みの着いた車に乗ったのはここ十年ほどの事であり、それ以前は後退と言えば後ろを振り返って行う物だった。あるいはドアを開けて後方を確認しながら行うというテクニックも用いる場面が有るだろう。

バックモニターはまさにこの様なテクニックを必要としない画期的な物だが、この仕組みの最大の罪というかデメリットは、直感的では無いという事だろう。

車庫入れや縦列駐車を苦手とする人の多くが、ハンドルをどっちに切って良いのか分からないと感じているのだから。

ゲームやラジコンカーを操作出来るか?

画面を見ながら自動車を操作する、という事は、自動車ゲームやラジコンカーを操作できる人間であれば比較的問題無く対応できるかもしれないが、その様な耐性が無い人達にとっては却って扱いにくいと言えるだろう。

例えばカーナビなどの地図を例に取ってみよう。

あなたは「北が上」のままで目的地までたどり着けるだろうか?あるいは、常に進行方向が上を向いていて、地図の方がそれに合わせて動いてくれないと無理だろうか?

女性が地図を読めないと言われる要因の一つとも言われているが、一度試してみて欲しい。北から南へ進行中、右へ曲がる場合は、西へ進む事になる。つまり地図上では「左へ曲がる」という事になる。

ラジコンカーでの操作に当て嵌めるなら、こちらに向かって走行している状態で「向かって右に曲げる」為には、ハンドルを左に切らなければいけないが、多くの人が右に切ってしてしまうだろう。

この様な事が、脳で処理できないという人は意外と多いものだ。

これと同じ事が、車庫入れなどの後退時に起こる。

どっちへハンドルを切れば良いのか分からない

前に進んでいる時に右へハンドルを切れば右に曲がる。というのは分かっていても、後退する時に右にハンドルを切ったらどっちへ動くのか?が頭で理解できないのだ。

本来であれば、何度か練習を繰り返し、体を動かしている内に感覚で掴めるものだと思うが、まずは頭で理解できないと体が動かせないという人も多いものだ。

こういう場合、人間というのは見た方向へ動くという本能を生かして、行きたい方向を実際に振り返って目で見る、という事で多くの場合は解消するだろう。何も考えなくても脳が本能的に処理できる事を利用するのだ。そして、かつてのバックモニターの無い車では、それは当たり前の事だった。

ところが、バックモニターという奴は、まるでラジコンカーやゲーム上の自動車を動かすかの様に操作する必要がある。慣れている世代なら多少は対応が早いのかもしれないが、そうではない方(例えば高齢者)などにとって、見ていない方向へ車を動かすというのは脳に大変な混乱を与える事だろう。

ならばモニターを見なければ良い、という話だが、人間、見えてしまうものは見てしまう生き物である上に、先述の通り死角の多い車の場合どうしてもモニターを見ながら後退してしまう。

この事が、思わぬ事故を巻き起こす遠因になっている気がしてならない。

周囲を確認して・・・の意味

バックモニターを作動させると、画面上には「周囲を確認して操作してください」という注意喚起の文言が出るが、実際にそれが何を意味しているのか?は、事故を起こさないと気づかないものだ。

見ていない方向へ進むという感覚に慣れてしまうと、今が前進しているのか後退しているのかという感覚も鈍らせるのでは無いだろうか?特に、何度も切り返して前進と後退を繰り返すような局面に置かれた場合など、結果として、前進のつもりで後退してしまい、ブレーキを踏んで停めるつもりが焦ってアクセルを踏んでしまい、これも脳で考えている事とは正反対なので余計に焦って力が入って全力で踏んでしまい、暴走する・・・という事故に繋がっているのではないだろうか?

本人は至って「正常に操作」しているつもりでも、この様な事が起こり得る。

解決方法の一つは原点回帰?

ここは一つ、原点に立ち返って、後退するときは後ろを振り返る、という、当たり前の事から始めてみてはどうだろうか。バックモニターは本当に死角になっている部分を事前に補助的に確認する程度、と割り切り、やはり目視で操作する方が良いかもしれない。

機械に頼りすぎるのは決して良い事では無い。使いこなしてこそ、の機械なのだから。
目視での安全確認は、何よりも大切だと思う。

全体が透けて見えるバックモニター

余談だが

以前、バックモニターを進化させた様な、車の後ろが全体的に透けて見えるという実験的な技術が公開されていたが、もしも、技術に頼るという方向性で行くのなら、この様な仕組みが広まる事が望ましいのかもしれない。

参考記事

以前に「通行人もビックリ! メルセデスが消えるBenzを開発! 」でLEDマットを使ってクルマの姿を消す技術をご紹介しましたが、今回は車庫入れや縦列駐車の際に車両後部が、透ける技術のご紹介です。最近ではバックモニターやパーキング・アシスト機能の普及で、小柄な女性が大型ミニバンを楽々車庫入れする光景を見かけるよ
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